4)最初は8ミクロン!? 昆布の成長、そして収穫

昆布が収穫できるようになるまでどのくらいかかるかご存知でしょうか?

多くの昆布は、地上の植物で言う発芽から収穫できるようになるまでには2年かかります。細目昆布など1年で収穫されるものも一部ありますが、ほとんどは2年ないし3年です。とても長く感じますね。

昆布の一生は、約8ミクロンという、顕微鏡でしか見えないとても小さな「配偶体世代」から始まります。

昆布の1年目:配偶体世代~一度枯れる

まず、大人の昆布から「遊走子」という状態で海中に放出されます。「遊走子」という名称は、海中を遊泳するための、長さが異なる2本の鞭毛を持っていることから付けられたものです。

この遊走子は、24時間ほど海中を遊泳し成長に適切な場所を探します。そして海底に着底し「発芽体」となります。少しずつ成長して「配偶体」という状態になりますが、この配偶体には雄と雌があり、秋前後に有性生殖を行って「幼胞子体」と呼ばれる状態になります。ここが昆布の赤ちゃんと言えるでしょう。この辺りまでが「配偶体世代」となります。

海底で育ちつつある幼胞子体は、冬の間も少しずつ成長します。そして春になると成長の速度が一気に速まり、夏ころには私たちが良く見る昆布の形に成長します。ただ、この状態はまだ1年目。少し小さめです。夏、秋と成長を続けた後、冬には葉の上部から一旦枯れていきます。そして根の部分だけになってしまいます。

昆布の2年目:再生と寿命

しかし、昆布はここから再生します。2回目の冬を越えて春になると、生き残った根の部分から再び昆布の葉が再生してくるのです。

そして2回目の夏には前年よりも大きな昆布になり、成長した昆布は収穫時期を迎えます。

ここで昆布の不思議な話を一つ。多くの植物は葉の先の方から成長します。根から遠い部分がより新しい組織ということです。一方、昆布はというと、根に近い部分が成長し、葉の先の方を押し出すようにして大きくなっていきます。葉の先の方が古く、根に近いところが新しい組織ということです。

成長した大人の昆布を「胞子体」と呼びます。この胞子体には「子嚢班」という、昆布の胞子を作る組織があり、ここから何億もの大量の胞子が放出されます。この胞子が前述した「遊走子」のことです。

1年目で枯れる前の秋口に遊走子を放出、前述した通り1度枯れた後2年目にはまた成長し、秋口にまた遊走子を放出、そして完全に枯れていきます。

簡単にまとめますと、昆布は
「遊走子」→「発芽体」→「配偶体」→「幼胞子体」→「胞子体」
というライフサイクルを持っており、2年ほどの寿命でその一生を終える、ということになります。

昆布の収穫

昆布は海に生息しているものです。なので、当然ながら船を使います。この船を「昆布船」と呼びます。

収穫時期は7~8月であることが多いですが、地域によってさらに早い場所もあります。昆布は天日で干す必要があります。なので、天候が非常に重要です。よく晴れていて波に穏やかな日に、早朝から昆布船を出し、昆布漁が始まります。

収穫場所では、「旗持ち」と呼ばれる昆布漁のリーダーに大きな役割があります。旗持ちが天候を見ながら、干す時のことも考慮に入れて、収穫スタートの合図を出します。このタイミングを見誤ると昆布が干せなくなり、せっかく収穫した昆布が台無しです。

昆布漁に適した天候になったら、旗持ちの合図で昆布収穫スタートです。昆布を上げる時には、かぎのついた長い棹で昆布を引っ掛けて引っ張り上げます。昆布は岩礁にしっかりと着生しているわけですから、この作業はとても大変な力仕事です。

昆布船いっぱいに昆布を収穫したら、港に戻って昆布を下ろします。そして干す作業が始まります。

昆布の天日干し

昆布は浜辺で天日干しされます。

干す場所を「干場」(または「乾場」、どちらも読みは「カンバ」)と呼ばれ、小石と砂利が敷き詰められています。その場所に並べて干されます。

昆布干し
Photo by (c)Tomo.Yun

昆布には表裏があり、すべて表にして干します。少し時間が経つと、それをすべて裏返します。

夕方には干した昆布を全て取り込みます。これは、夜になると湿度が上がり、昆布が湿気を吸ってしまうためです。

この天日干しの質によって昆布自体の質も変わってしまうため、一連の流れにおいてはとても気配りがなされています。

そうして干されて乾燥した昆布は、長さ、幅、重さなどによって等級分けされます。